脊椎マニピュレーション 第2章①「患部はどのような状態なのか?」
第2章
腰痛時、患部はどのような状態なのか?
正常な椎体はニュートラル・ポジションでは
胸椎・腰椎ともに体幹を側屈しても同方向には動かない
これは第一章でお話したことです。
もし腰痛がある場合、
1つあるいは複数の腰椎が動かなくなっており、
椎骨が同方向の側屈・回旋が起こります。
そして椎間関節が固まっていれば
後屈・前屈において正常には動かない
制限のある関節が固定され軸となり、
誤った動きへと強制します。
脊椎マニピュレーションはずれている椎骨を元に戻すというより、
制限されている椎間関節をリリースすることによって機能を回復させることです。
リリースした椎骨の動きは個人差があり、
椎骨を戻しても、椎間関節の制限をリリースしなかった場合
それは機能障害が残った状態で、痛みは再発します。
機能障害とは単に椎骨の位置がずれているということではなく
両側の動きが制限されたときに痛み、機能障害が発生します。
治療の目標はあくまでも「椎間関節面の制限を取り除くこと」
位置がずれていながらでも適切に機能している椎骨も存在しており、
椎間関節や筋筋膜の制限が患部において動きの妨げになっていない時があります。
人の適応能力
人の構造はその人独自のものであり、また重力やストレスに適応する方法も
その人の唯一の方法で適応しています。
つまり現在の椎骨の位置がその人にとって正しいと言えます。
他の位置では正常に機能しないかもしれません。
故に一般的な理想の位置に強制的に変えたとしたとき、
かえって痛みを生み出してしまうかもしれません。
人の動作パターンは脊髄を上下するニューロンに影響を受けています。
それぞれのニューロンは動きによって必要とされるパターンに基づき呼び出される。
ニューロンが脊髄のどこに位置しているかではなく、
どの組織を支配しているかに応じて活性化されるのです。
脊髄は大人数のパレードの行進のように
一人でも動きがおかしくなってしまうと
他にも影響を及ぼしてしまいます。
脊柱は区分され、脊髄を収納し保護していますが、
脊髄そのものは分かれていません。
分節は神経線維を集めて神経根や神経というケーブルにしたもので、
それが各組織を支配するようになっている。
分節されているのは神経の出入り口だけであって脊髄の機能そのものではない。
繰り返しになりますが、脊椎マニピュレーションの目的は
単に椎骨を元の位置に戻すことではなく、
また理想の動きをする脊柱を作ることでもありません。
真の目的は「正常な動きのパターンの回復」です。
筋筋膜・靭帯・関節のシステムが固くなった結果、
様々な局所的停滞を生み出し、
全身の統合した正常な動きを妨げるようになります。
痛みは何気ない動作で急に現れるように思えますが、
すでに制限は存在しており、
やかんで言えば常に加熱されいつかは沸騰してしまう状態です。
もし沸騰してしまったのであれば、
それは痛み閾値を超えてしまったことになります。
そうなるまでの原因はさまざまあります。
脚力が弱ってしまって体を十分支えられていなかったことかもしれませんし、
もしくは古傷や重力による機能障害かもしれない
また調子がいいと思っている時から椎骨はタイプⅡの動きをしていたかもしれません。
身体は危機的な閾値を超えてしまうと、神経系は危険察知して
筋肉に強いスパズムを起こさせます。
椎骨はタイプⅡの位置で固くなり椎間関節に制限が生まれる
(腰背部の硬直はこれだけが原因とは限らない)
固まってしまった椎間関節はさまざまな動作制限を引き起こし、
ほかの脊柱にも悪影響を及ばし、そしてほかの椎間関節も制限していきます。
参考・引用文献:
「脊椎マニピュレーション
~機能障害に対する軟部組織からのアプローチ~」
Jeffrey Maitland 著
翻訳:田喜知秀彦
監修:泉秀幸
出版:医道の日本社
※このブログでは究極に読みにくい治療本
脊椎マニピュレーション
~機能障害に対する軟部組織からのアプローチ~
Jeffrey Maitland 著 出版:医道の日本社
を要約し、治療で必要と思われるところをまとめたものになります。
なお、使用している写真はフリー素材であくまでもイメージになります。
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